極上な恋をセンパイと。
夜は人を惑わす
「お疲れ様ー!」
少しだけ煙たい店内。
仕事帰りのサラリーマンでごった返している。
「部長、お疲れ様です」
あたしはビール瓶片手に部長の隣に腰を落とした。
「おお、佐伯。悪いな」
少しだけ残っていたビールをグビッと飲み干すと、部長はあいたグラスを差し出した。
コップに並々注がれたビール。
部長はあたしの手から瓶をとると、あたしにもお酌してくれた。
「飲めるだろ?」
「ありがとうございます。……で、でも、たしなむ程度ですから」
「っはは。そーやって言う奴は、だいたい酒豪なんだがな」
チンと涼やかな音をさせて、乾杯をした。
やっぱり仕事終わりはビールよね!
って、23の女がいきなり飲み屋で「とりあえず生ぁ!」って言うのもなんだか気が引ける。
だって、きっと男の人からしたら「カルアミルク♡」とか言ってた方が可愛げがあるんだろうな。
まあでも。
部長がすすめてくれたんだし。
無下にはできないよね?
いただきまーす!
グイグイといつもの容量でビールを飲み干していたあたしの元に。
頭上から呆れたような声が降ってきた。
「お前、すげぇな」
「……んぐっ!」
思わず吹き出しそうになって、慌てて口を手で押さえる。
なんとか口に入っていたものを飲みこんで、あたしは恐る恐る顔を上げた。
真上から覗き込むようにして、顔を出したのは。
ひえっ!
「あ!久遠さん、やっと来ましたねぇ。遅いっすよ」
うわ。センパイなんてタイミング。
てゆか、今すごいって言われた?
完璧引いてた気がする……。