極上な恋をセンパイと。
「あ……宇野です。宇野浩介」
「……」
差し出された手に目もくれず、あたしは部長がいるのも忘れて目の前の男を見つめてしまった。
「佐伯、どうした?」
「え、あ……いえあの……」
我に返った。
間違いじゃない。
真っ黒で、艶やかな黒髪。
斜めにした前髪の向こうには、いつかあたしが愛した宇野浩介がいた。
変わっていない……。
うんん、変わってる?
海外に行って、少しあか抜けている。
あきらかに動揺をしたあたしを見て、浩介の雰囲気がふわりと柔らかくなった。
「あはは。こんなにキレイな人に見つめられたら、俺どうしたらいいかわかんないな。渡部さん、この子が例の?」
え?
ハッとして顔を上げると、浩介はあたしの前を通り過ぎ掘りごたつに腰を落とした。
「そうそう。ちゃんと会わせてやったんだから感謝しろよ~」
「はい。感謝してます。想像通りの人だ」
……。
完全に置いて行かれた。
なんの話してるの?
部長……。
それに…………浩介は、あたしに気付いていない?
それならそれで、ちょっとだけホッとしたような。
あたしの事なんて、忘れちゃうような存在なんだなって、なんだかそう思うと可笑しくなってしまった。
気を取り直して席につく。
「では、皆お疲れ!」
「お疲れ様です!」
「お疲れ様です」
チン!と、お互いのグラスを掲げれば、涼しげな音が響いた。