極上な恋をセンパイと。

「それにしても、この前のゴルフ凄かったですね」

「ああ、雨の中やったアレな」


部長と浩介は、どうやら以前から顔見知りのようだ。
聞く話によると、去年の今頃に村尾さんに紹介されたんだとか。

それからふたりは、公私ともに気兼ねなく付き合える仲になったらしい。



あたしはふたりにお酌しつつ、高級料理を堪能していた。

ふたりの話は面白い。


聞いてるだけでも可笑しくて、つい口にだして笑ってしまった。



「ほんと渡部さんは大人げないところがあるからなぁ。奥さん心配するでしょ」

「おいおい。こんなに落ち着いてる俺のどこが大人げないって?うちの奥さんは俺にベタ惚れだぞ」

「それです。それが大人げないって言うんです。だから俺いつも奥さんに見張っとけって言われるんですよ」




へえ……渡部部長。
奥さんには頭上がらないんだ。

なんか意外。


ふふって含み笑いしながら、ビールの入ったグラスに口をつけた。

あれ、もうないや。
えっと、ビールはっと……


「佐伯さん」





すると、すぐに目の前にビール瓶が差し出された。

さらに視線をあげると、浩介がビール瓶を持ってニコリと微笑んだ。


「あ、すみません」

「いえ。お酒、好きなんですね」

「あはは……はい」


並々に注がれたビールに口をつけながら、苦笑いを零した。

浩介とは、お酒飲みに行ったりとか、どこかへ出かけるなんて事、しなかったもんね。


なんてぼんやり考えていると、突然スマホの着信音が狭い個室に響いた。






< 165 / 243 >

この作品をシェア

pagetop