極上な恋をセンパイと。

どうやらさっきのは、仕事の案件で電話してきた久遠センパイからのものだったようだ。

それで、あたし達がここにいるから帰るなら寄れ、とセンパイを誘ったらしい。



「……」



なんなのこの状況は。

豪快に笑う、空気を読まない渡部部長。
ニコニコと人懐っこい笑顔を零す、元カレ宇野浩介。

気だるそうに彼らの声に耳を傾ける、直属の上司で……今すごく微妙な関係の久遠和泉。


あたし全然意味わかんないんですけど!

顔は笑っていても、さっきから指先はどんどん冷えていく。




「へえ。佐伯さんってすごいんだね」

「へ?」



悶々と考えていたら、急に話を振られて我に返った。

す、すごい?


「そうだ。佐伯はこう見えてすごいんだ。な、イズミ!」

「……どうですかね」


え、全然話見えないんですけど。


「あ、あの……なんのことですか?」


恐る恐る聞くと、部長がバシンと肩を弾いた。



「あたっ」

「ははは! イズミも素直じゃないなあ。こんなふうに必死に食らいついてくる後輩初めてだろう。だから佐伯が可愛くて仕方ないんだよな? オフィスでお前たちの言い合いは痴話喧嘩みたいなもんだしな」


えええっ!

そ、そうだったのセンパイっ!


色々恥ずかしい事言われてる気がするけど、センパイあたしの事そんなふうに思ってるの?


思わずセンパイを見ると、お刺身を口に運んだセンパイが視線だけを上げた。

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