極上な恋をセンパイと。
チラリとセンパイの様子をうかがってみる。
「――だいだい、俺よりも宇野さんの方が中毒でしょ」
「あはは。それもそうだ」
いつも通り。
悔しいくらい変わらない。
……でも。
ほんの少しだけ感じた、小さな違和感。
なんだろうこれは。
「じゃあこれから宇野さんがうちに?」
「そうなるな。久遠の噂聞いてるからオフィス覗くの楽しみだよ」
「噂?」
「仕事の鬼。キレると怖い。氷のように冷たい。でも女子社員からの人気は絶大」
って、浩介!
そんなズバズバと……。
サーッと血の気が引いて行く。
そんなあたしに、浩介はニコニコと笑顔を向けた。
「だろ? 渚」
「えっ」
あたしに聞く?それを!
「あの、そうなんですよ!女子社員からの人気は不動で……。あ、それと、鬼って言うのは仕事に対してストイックって意味ですからね?センパイ!」
「……俺は鬼でも構わねぇけど」
センパイはさして興味もなさそうにそう言って、残っていたビールを飲み干すとゆっくりと立ち上がった。
「なんだ、帰るのか?」
部長が声をかけると、背広を羽織りながらこちらを振り返った。
「はい。これから友人と会うんです」
「そうだったのか。付き合ってくれてサンキューな」
「いえ。じゃ、お先です」
センパイは部長と浩介に向けて言うと、さっさと個室を出て行ってしまった。
「……」
目、合わせてもらえなかった……。
なんで? センパイ……。
距離を詰めてきたかと思うと、あっという間に走り去る。
センパイがわかりません……。
とっくに消えてしまったセンパイの残像をいつまでも追いかけてしまった。