極上な恋をセンパイと。






早朝。

あたしはいつもより早く出勤して、センパイを待つことにした。


受付けには、まだ白鳥百合の姿は見当たらない。

ロビーを抜けて、いくつもあるエレベーターの一つに並んだ。




すぐにエレベーターが来て、扉が開く。

もちろん、誰もいない。


ガラス張りの窓からは眩しい朝日が差し込んでいた。

ちょっとだけそれに目を奪われながら、そっと乗り込む。


たまには……。
早朝出勤もいいもんね。

こんなふうにエレベーターを独り占めする事なんて、滅多にないもん。



ぼんやりと外を眺めていると、31階よりもずっと手前で止まった。





胃の浮く感覚がして、扉に視線を上げた。
ゆっくりと開いた向こう側に現れた人物に、息が止まった。




「……あ……」

「……」




それは、正真正銘。
待ち伏せしようとしていた、久遠センパイ。


真っ白なシャツ姿に、緩んだネクタイ。
少し疲れた真っ黒な髪。

一瞬視線が絡み合って、でもそれはすぐに逸らされた。


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