極上な恋をセンパイと。
え……まさか、徹夜?
ビックリしすぎて、言葉どころか身動き一つとれないあたし。
でもセンパイは、そんなあたしの存在にさえ気付いてないように、無言でエレベーターに乗り込んできた。
扉のすぐそばであたしに背を向けたセンパイは、25階のボタンを押すとその手をポケットに入れた。
「……」
ど、どうしよう。
これは、無視されている?
背の高いセンパイをチラリと見上げた。
その背中からは、『話しかけるな』オーラがヒシヒシと伝わってきた。
ウィーーーン……
狭い密室空間。
ただ聞こえるのは、静かに動くエレベーターの音。
そして、やたら耳につく大きな心拍数。
肩にかけた鞄を無意識にギュッと握りしめていた。
話しかけなくちゃ。
いつも通りに。
『おはようございます。今日も家に帰ってないんですか?不摂生ですよ』
そしたらきっと、センパイはこう返してくれる。
『うるせぇな。お前は俺の嫁か』
……って。
そんな何気ない言葉が、全然出てこない。
グルグルと考えていると、エレベーターはセンパイの目的地へと到着した。
すぐに扉が開いて、何も言わずセンパイは出て行ってしまった。