極上な恋をセンパイと。
パリから恋敵
茫然としたまま、エレベーターは1階へと舞い戻ってしまった。
ドクン ドクン
ご、強引すぎる……。
『知るか』
……。
冷たい一言。
でも、その瞳の中に激しい熱を感じたのは、やっぱりあたしがセンパイのキスで骨抜きにされちゃったせいなのかな。
始業時間を迎えるビルは、すでにたくさんの人。
あたしはひとり、真っ赤になったまま静かに俯いていた。
「だからお前はどうしてこうミスをすんだ!打ち間違えしてんだろ!ここと……ここも!」
「え、してません!何度も確認しました!」
怒られたくなかったから!
ムッとしたあたしを、センパイがジロリと睨む。
ほら!よく見てくださいよ。
今度は間違えてなんて……。
あれ……?
よく見れば、たしかにセンパイに指摘された箇所に打ち間違いがあった。
「……」
「仕事中だぞ、ほかの事考えんな」
「……はい」
そうさせてるのは……センパイですよ!?
朝、誰もいないエレベーターであんなえっちなキスされようとも、仕事は仕事。
隣同士で、私語は一切話さずに黙々と作業して半日。
ほんとの事言うと、顔を見るのも気まずいくらいだけど。
そんな事は言ってられない。
だから、資料を渡してすぐさま次の仕事に取り掛かるつもりだったのだ。
でも……あたしのアホ。
こんなこと言われてても、思い出しちゃうんだもん。
頭とは関係なく、身体が反応しちゃう。
ジワジワと頬が火照る。
センパイの目を見ることも出来ずに、あたしは小さく頭を下げた。
「スミマセンでした」
「……いいよ。お前は飯行ってこい」
え?
低い声。
ハッとして顔を上げると、すでにパソコンに向きなおしてしまったセンパイがいて。
その横顔は、頬にかかる前髪で見えなくなっていた。
うそ……ほんとに怒らせた?
そうだよね。センパイなのに……口答えなんかして……。
「あの、」
やり直します!……そう言おうと口を開きかけた時だった。