極上な恋をセンパイと。
―――プルルル!
突然、あたし達の間を引き裂くように電話が鳴った。
見ればそれは受付からの内線で。
あたしは慌てて駆け寄ると、そっと受話器を取った。
「ハイ!第二企画部、佐伯です」
『久遠さんにお客様がお見えです』
それは白鳥百合の声。
いつもよりワンオクターブ高い声に、え?と聞きかえしてしまいそうだった。
「あ、わかりました。 センパイ、お客様だそうです」
一旦保留を押して、振り向きながら言うと眉間にシワを寄せたセンパイ。
「客?」
「はい」
ジッと考え込むようにすると、小さくため息を零した。
「……今行くと伝えろ」
「はい」
…………センパイ?
「……今から伺います」
でもよかった。
これでセンパイがオフィスを出れば、あたしひとり。
ちゃんと間違えた個所を直そう。
そう思い、受話器を置こうとした。
でも、まだ白鳥百合が何か言ってる。
『ちょっとちょっと』
「へ?」
スーツのジャケットを片手に、センパイがオフィスから出ていくのを見送りながら、受話器を耳にあて直すと、いきなり小声になった白鳥百合が不審そうな声で言った。
『なんかすっごい美人が来てるわよ』
「美人?」
『普通の来客って感じじゃないけど』
「……」
―――カチャン
……電話をもとの位置に戻すと、にわかに廊下が騒がしくなった。
時計を見ると、12時。
ランチの時間だ。
……美人って……誰だろう。