極上な恋をセンパイと。


「……」


じぃぃぃぃ。

そうです。あたしがいるのはロビーの受付……が見える柱の陰。


どれ?

どの人?



別の人と交代で休憩に入っているらしく、すでに白鳥百合の姿は見えない。

傍から見たら、ものすごーく不審な行動。
でも、気になる。

と、その時いきなり誰かに肩を叩かれて、思わず飛び跳ねそうになった。


「ひゃ!」

「なんて声出してんのよ」

「へ?」


振り返ると、そこにいたのは白い目をした……白鳥百合。
花のような甘い香りを漂わせた彼女は、ふんと鼻を鳴らすと腕組みをした。


「こんなとこでコソコソと。気になるんなら堂々と間に割り込めばいいじゃない。意気地なしね!」

「……わ、割り込む?」


堂々と割り込む理由ないじゃない!
……今の所。


「あたしは状況を確認しに来たの。ほっといて」


白鳥百合から視線を逸らすと、またこっそりとロビーを見渡した。

ちょうどその時だった。


「渚さーーーん!」

「ひゃっ!!」


ロビーに響き渡る声がして、今度こそあたしは持っていた財布を落っことしてしまった。


行き交う人たちがチラチラとこちらに視線を投げる。

あたしは慌てて財布を拾うと、駆け寄ってきた革靴が視界の中に飛び込んできた。



「ちょうどよかった。お昼行きましょ!……って、うわっ!ゆゆゆ、百合さんっ!」


それはもちろん、真山くんで。
そんな真山くんの動揺なんかお構いなしで、白鳥百合は「そうだ」と両手を叩いた。


「たまには3人でランチしない?」

「え?」



見上げると、ニヤリと含み笑いをした白鳥百合がいて。


何だろう。
嫌な予感しかしないんだけど……。
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