極上な恋をセンパイと。


「……」


それぞれのテーブルの間には、家具や木々は置かれていてちゃんと目隠しがある。


「……にしても。モデルのミュウと知り合いなんて……。さすが!久遠センパイっすね」

「ふーん。モデルねぇ。たいしたことないじゃん」

「……」



―――……そう。

このカフェに、久遠センパイと噂の美人がいるのだ。

しかも……あたし達がいるテーブルの真裏!


だからさっきから気が気じゃない。
もし大声で喋ろうものなら、きっとセンパイにあたし達の事がバレてしまう。

ただでさえ機嫌の悪いセンパイだ。
こんな事してるの見つかったら、きっとただじゃすまない。


ブルッと身震いすると、あたしは気を引き締めて聞き耳を立てた。


……こんなのイケナイ。
良いハズがない。


でも、体は正直で、勝手に耳がダンボになる。





――――……
――――――……



「いきなり来るなって言ってあっただろ。俺がいなかったらどうするつもりだったんだ」



聞こえてきたのは、呆れたようなセンパイの声。
でもそれは決して怒ってるんじゃなくて、本当に自分がいなかった時の事を心配してる声色だ。


「えへ。ごめんなさい。でもイズミの驚く顔が見たくって」

「は? ……悪趣味だな」

「そうなの。私の男の趣味は最悪なの」


コロコロと、鈴の鳴るような笑い声。
その声は、すんなりとあたしの中に落ちてきた。


チラリと視線を泳がすと、真っ黒なボブが目に入った。

ステンドガラスが差し込む七色の日差しを受けて、彼女の髪も艶やかに光る。

華奢な肩が上下して、キレイなネイルがキラリと輝いた。


その横顔は……。


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