極上な恋をセンパイと。
◇
「確認、お願いします」
「ん」
パソコンに向けられていた目が、チラリとあたしを捕え、そしてすぐに手元に落ちた。
センパイはいつものごとく何も言わないまま、ペラペラと資料を確認してあたしに戻す。
「人数分のコピー忘れるな」
「はい」
それは、オッケーと言う事。
あたしはセンパイに一礼すると、オフィスを後にした。
もちろんオフィス内にもコピー機はある。
でも、誰かが使っていたりとか、大量にコピーする場合は、コピー室のものを使うんだ。
色んな人が行きかう廊下を歩いていると、後ろから久遠センパイがあたしを呼び止めた。
「佐伯!」
一瞬ピクリと肩が跳ねて、それでも平常心で振り返る。
「はい」
「……悪いけど、これもコピーしてきてくれ。30だ」
「わかりました」
ふたりの間に沈黙が降りる。
あたしはキョトンとして、首を傾げた。
「久遠センパイ? 他に何か」
「あ、いや……。よろしく」
「はい。失礼します」
何か言いかけたセンパイから逃げるように、あたしは背を向ける。
痛いくらいの視線を、背中に感じながらコピー室に急いだ。
……あの日から、一週間。
あたしはセンパイにどう接していいのかわからずに、戸惑う自分の気持ちを持て余していた。