極上な恋をセンパイと。





「確認、お願いします」

「ん」



パソコンに向けられていた目が、チラリとあたしを捕え、そしてすぐに手元に落ちた。
センパイはいつものごとく何も言わないまま、ペラペラと資料を確認してあたしに戻す。


「人数分のコピー忘れるな」

「はい」


それは、オッケーと言う事。
あたしはセンパイに一礼すると、オフィスを後にした。


もちろんオフィス内にもコピー機はある。
でも、誰かが使っていたりとか、大量にコピーする場合は、コピー室のものを使うんだ。


色んな人が行きかう廊下を歩いていると、後ろから久遠センパイがあたしを呼び止めた。



「佐伯!」



一瞬ピクリと肩が跳ねて、それでも平常心で振り返る。


「はい」

「……悪いけど、これもコピーしてきてくれ。30だ」

「わかりました」



ふたりの間に沈黙が降りる。

あたしはキョトンとして、首を傾げた。


「久遠センパイ? 他に何か」

「あ、いや……。よろしく」

「はい。失礼します」


何か言いかけたセンパイから逃げるように、あたしは背を向ける。
痛いくらいの視線を、背中に感じながらコピー室に急いだ。




……あの日から、一週間。

あたしはセンパイにどう接していいのかわからずに、戸惑う自分の気持ちを持て余していた。
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