極上な恋をセンパイと。
「はあ……」
疲れた。
息が詰まる。
会社を出ると、とたんに零れたため息。
ここ最近、あたしはミスひとつない。
神経を研ぎ澄ませているし、仕事に集中することで、気持ちをなんとか保たせていた。
こんな自分が情けない。
またひとつ、ため息が出そうになったその時だった。
「渚さん? やっぱり渚さんだ」
「え?」
突然肩を弾かれて、ハッと顔を上げた。
振り返ったそこにいたのは、大きくて、ヒゲの生えた、クマみたいな……。
「え、……い、磯谷さんっ!」
「いやぁ、良かった!このキレイな後姿を見間違えなくて」
磯谷さんは嬉しそうにそう言って、太い腕を回しあたしをギュッと抱きしめた。
ついでに頬に、ぶちゅっとキスをされる。
ひゃあああ!
ギョッとしてそのまま固まったあたしなんかお構いなし。
磯谷さんは、ニコニコと人懐こい笑顔を零した。
「どう?久遠くんとは」
「え?」
「うまくやってる?」
あたしは、磯谷さんのその言葉に応える事が出来ずに、曖昧に笑った。