極上な恋をセンパイと。
「あたしの事、どう思ってるんですか?」
「センパイの事が、わかりません」
さらっと、そう言えたらどんなに楽だろう。
仮にもあたし達は、同僚であり後輩と先輩であり……仕事仲間なのだ。
でも……もうとっくにその隔たりは超えてしまってる。
久遠センパイ……。
仕事も出来て、頭はすこぶる切れる。
口が悪いけど、実は優しくて……人の本質を見ようとしてくれてる。
仕事以外は不器用な、そんなセンパイを、あたしは好きになってしまった。
……もう、ただの同僚になんて戻れないよ。
確信が欲しい。
センパイが、あたしを想ってくれてるって。
あたしと同じ気持ちだって。
じゃなきゃ、怖くて進めない。
あたし、臆病だな……。
「佐伯、お前……」
センパイが、小さくそう言った時。
お店を出てきた美優が、あたし達に駆け寄ってきた。
「イズミお待たせ。ね、磯谷さんはこの後別件があるんですって。イズミはまだいいでしょ?」
「俺? いや、俺は……」
美優はセンパイの腕に、自分のをそれをしっかりと絡ませた。
腕を引かれたセンパイは、バランスを崩しながらもその腕を解こうとはしない。
さすが、パリでモデルをしている美優。
スラッとしてて、背も高くて……。
こうしてセンパイと並ぶと、ふたりはすごくお似合いだ。
「いいじゃない。まだまだ話したい事あるのよ。ね、いいでしょ?……あ、えっと渚さんだったわよね?あなたは、どうする?」
「え?」
突然話を振られて、ハッとした。
見ると、美優はその大きくて吊り目がちの瞳をグッと細めた。
それは……拒絶の現れ。
「あたしは……今日はこれで失礼します。明日も早いので……」
あはは。声、震えてるし。情けな……。
小さく頭を下げると、パッと美優の表情に花が咲いた。
「え~?そうなの?それは残念。じゃイズミ、行きましょ」
「美優、」
「ほらほらっ。じゃあね渚さん。今日は会えて嬉しかったわ」
何か言いかけたセンパイの腕を、美優はグイグイと引っ張って行ってしまった。
………………。
思い切り踵を返すと、あたしは自分の家へと急いだ。
さっさとシャワーを浴びて寝てしまいたかった。
こんな気持ち、全部流れて忘れられたらいいのに……。