極上な恋をセンパイと。
あたしと彼と彼女の休日
◇
「映画、ですか?」
「磯谷さんも衣装担当で参加してんだって。興味ある?」
―――次の日。
寝不足のまま出勤したあたしを待ち構えていたのは、他でもない久遠和泉。
磯谷さんが衣装を?
観たい!
そう言おうとして、思わず口をつぐんだ。
差し出されたそれを受け取ると、チケットには、12月20日としてある。
えっと、20日は来週の土曜日だ。
チケットは1枚。
でもこの券でふたりまで観に行けるんだ。
「あの、センパイは……」
オズオズ顔を上げる。
そんなあたしに気づいたセンパイが「ん?」と首を傾げた。
その動きに合わせて、真っ黒な髪がフワリと揺れる。
前髪の奥の、アーモンドの瞳が真っ直ぐにあたしを見下ろしていて。
うう……。
頬に熱が集まるのを感じながら、小さく息を吸い込んだ。
「センパイは……」
「俺?」
「はい。あの、よければ一緒に……」
行きませんか?
たったそれだけの言葉が、すんなりと出てこない。
あたしってほんと情けない。
男の人を誘うなんて、初めてでもあるまいし。
はぁあ……。
思わずため息を零した、その時だった。
センパイは、さっさと自分のデスクに戻ると、視線を合わさずに言った。
「俺も行くに決まってんだろ。あ、それと。その日は1日あけとけよ」
「え?」
「駅前に10時な。絶対遅れんな」
「は、はい!」
信じられない……。
センパイとふたりで映画?
今までうじうじしていた胸のモヤモヤが一気に晴れていく、そんな気がした。
あたしってば、ほんと単純。