極上な恋をセンパイと。
久遠和泉。
うちの会社ではちょっとした有名人で、きっとあたしだけじゃなくて彼を知らない人はいないはず。
大きな窓から差し込む太陽の光に透けちゃいそうな、サラサラした真っ黒な髪。
ワックスでフワリとセットしてある。
キリッとした整端な横顔。
意志の強そうな切れ長の瞳。
真っ黒なワイシャツを少し着崩して、袖から伸びる筋肉質の腕にはおしゃれな腕時計。
かっこいいな……。
……黙っていれば。
ぼんやりと見惚れていた、その時。
バターン!と大きな音をたてて会議室の扉が開いた。
「すまんすまん! 待たせちゃったかな」
そう言って現れたのは、知らない顔。
ハッハッハッ!なんて豪快に笑いながらその人は、彼の肩をバシンと叩いた。
その衝撃で、センパイの体がグラリと揺れてキレイな表情を崩した。
「これからお前と一緒に仕事できると思うと、ワクワクするよ」
「……ははっ。俺もです。でも、勢いで殴るのやめてください」
「悪い悪い。つい、な」
ニッコリ笑った口から真っ白な歯がこぼれて、その人はあたしに視線を落とした。
「えーと。佐伯渚くんだね?」
「あ……はいっ」
成り行きを黙って見ていた、ううん。
ただ固まっていたあたしは、急に話をふられ慌てて背筋を伸ばした。