極上な恋をセンパイと。
引き抜きの話。
あたしの仕事をかってくれてるなんて、こんな光栄なことはない。
だけど、ちゃんと断ろう。
あたしは、センパイについていく。
そう決めて、パソコンのスイッチを起動させた。
センパイに頼まれた案件を、今日中にまとめなくちゃならない。
午後一で会議が入っているからだ。
山のようにたくさん積まれた資料の中から一つを取り出して、パラリと開いた。
「……」
資料の中には、顧客が年齢別にズラリと並んでいる。
この商品を買う主な年齢層と、需要がびっしりと書かれていた。
所々に、センパイの字が走り書きされている。
今回は、コスメと一緒に販売するポーチを手掛けることになっていて。
買いたい、毎朝このポーチでお化粧したい、そう思ってもらえるものを、いくつか考えていた。
この案件が通るかは、24日のコスメ会社との会議で決定されることになっていた。
でも、センパイが言っていた。
今回は難しいだろうって。
依頼があったのは、大手のコスメ会社。
だから、今回はうちだけじゃなくて他にも同じように依頼していたからだ。
その中には、もっと有名な名前の企業もあった。
大事な企画。
だから、絶対成功させたいってセンパイは言っていた。
あたしも、少しでもセンパイの役に立てるように精一杯バックアップしなくちゃ。
恋とか愛とか、浩介やモデルの美優のこと。
とにかくそれまでは忘れて。
集中しよう。
がんばるんだ。
「よし」
気合いを入れ直すと、あたしは長い髪をひとつにくくってパソコンと資料に噛り付いた。