極上な恋をセンパイと。

映画館の中はたくさんの人でごった返している。
ほとんどカップルに埋め尽くされたそこでは、ちょっとでもセンパイから目を離したらはぐれてしまいそうだ。

磯谷さん本人からチケットをもらっていたあたし達は、二階の特別席で観られることになっていて。
ようやくそこにたどり着く頃には、一日の体力を使ったような気さえした。



「……はあ」


フカフカの座席に腰を沈めれば、自然とため息が零れる。


やっと座れたから?
うんん、違う。

ため息の原因は、もっと他にある。


さっきから、痛いくらいの視線を背中に感じていた。

もうそれは、殺気。


怖い……。
見られてる……見られてるんですけど?

思わず頬がピクリと痙攣しそうになって、それをごまかそうと手元のパンフレットに視線を落とした。




なんで……。
なんで彼女が一緒なの?
聞いてないんですけど……これって詐欺じゃない!?



「イズミ~、わたしなんだかお腹すいちゃった」


最高に甘ったるい猫撫で声!
この声の主は…………田所美優!!!!



「腹減ったって、お前朝飯は?」

「わたしは美容と健康の為に、朝はスムージーだけなの」

「へえ」

「大変なのよ、この身体維持するのも」


チラリ。

悪意のある視線をまた感じて、顔を上げてにっこり微笑んで見せた。


「あの、これ食べます?」

「いらないわ。太るもの」

「ですよね~」


…………すみませんね。
ポップコーンなんて買ってきて。

だってチケットについてたんだもん!サービス券が!

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