極上な恋をセンパイと。

それからほどなくして映画が始まった。


スクリーンの中では、洗練された服を着こなした俳優たちが甘くて苦いラブストーリーを演じていた。

隣では、美優が時折センパイに話しかけていた。
そのたびに、顔を寄せるセンパイ。

映画に集中したいのに、全然出来ない。



と、その時。
スクリーンの中に、艶やかに光る真っ黒な髪が現れた。



「……」


磯谷さんの手がけた衣装を着た、美優だ。

やっぱりモデル。
映画のワンシーンだけの出演にもかかわらず、彼女は物凄い印象を残した。


それで……彼女もここにいるんだ。
自分も出てる映画だし、チケットあるのも当然だよね……。




「…………」


って、それなら……。
ちょっと待って?


あれ? あたしが呼ばれてる方が不自然?

もしかして、また余分に呼ばれていたんだろうか。
だから美優はあたしがいることが気に入らない。

なるほどなぁ。
てかセンパイ……何考えてるの?



目の前では、大画面で美優は幸せそうに笑っていた。



…………。

気付かれないように見上げれば、真剣にスクリーンを見つめるセンパイがいて。

悔しいくらい綺麗で……魅力的で。
あたしは、キュッと下唇を噛みしめた。


そうしていないと、溢れそうな想いが涙になって零れてしまいそうだった。


ふたりで映画って……浮かれて。
オシャレして、バカみたいだ。


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