極上な恋をセンパイと。

「……佐伯?」


グイッと手を引かれ、強引に振り向かされた。

あたしを見降ろしたセンパイが何かに気付いてそのアーモンドの瞳を見開いた。
それから、グッと眉を寄せる。




「……お前、なに泣いてんだ?」

「……」


泣いてる?

あたし、泣いてるの?


自分でも気づかないうちに、頬にポロポロと大粒の涙が零れていた。




……最悪。

これ以上かっこ悪いところを見られたくなくて、パッと俯いた。
でも、センパイはそんなあたしの顎をクイッとすくい上げると、そっと視線を合わせてきた。



「なんなんだ、お前は……」


眉間にグイッとシワを寄せたセンパイ。
真っ黒な前髪の向こう側で、センパイの瞳が真っ直ぐにあたしを見降ろしている。


さも、迷惑そうに。

そりゃそうだ。
こんな道端で。

ボロボロに泣いてれば、行き交う人が好奇の目であたし達を見ていく。



「……っ」


唇をキュッと引き結んで、これ以上涙が零れないように願った。

でも、そんなあたしの決意を揺るがすのはセンパイで。
答えを促すように、指先が唇をなぞる。


なんでこんな事するんですか……。



「も……、めて……さい」

「え?」


震える唇を噛みしめた。
言ってはダメ。

だって、この口を開いてしまえば……。





「もう、やめてくださいっ!」



――――止まらない。



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