極上な恋をセンパイと。
その日は、センパイは会社には顔を現さなかった。
なんでも、取引企業に挨拶にいってるんだとか。
急に決まったようで、急いで回ってるんだって、部長が言っていた。
あたしは、パソコンから視線を落とすとスマホをチェックした。
画面をタップすると、数件のメッセージが届いている。
実家のお母さんから、年末についての予定と、大学の頃の友達。
あとは……浩介からだ。
【24日、渚の考えを聞かせて欲しい。
まだ決めなくてもいいから、迷ってるなら相談に乗る。
イブだし、もし予定あったら連絡して】
イブか……。
その日は、コスメ会社との会議が午後から入っていた。
えっと……。
手帳を開いて、スケジュールを確認する。
会議は、16時からだけど。
それに参加するのは、部長と柘植さんと……久遠センパイ。
あたしは、いなくてもいいんだけど……。
「……」
パタンと手帳を閉じて、資料を手に取った。
カタカタカタ……。
誰もいないオフィスに、やたら響くタイピングの音。
センパイに追いつこうと必死にやって来た。
その音はいつしか、センパイの奏でるそれに、似ている気がした。