極上な恋をセンパイと。
「課長!ありがとうございましたっ。あたしやれるだけやってみます!」
思い切り立ち上がって、両手をグッと握りしめる。
そんなあたしに「がんばって」って言いつつ引きつってる時東課長がいて。
そんな課長を横目に、残っていたコーヒーをガブガブ飲み干した。
そうと決めたらすぐ行動!
スマホを取り出して、勢いよくメッセージを打ち込む。
もちろん送り先は……。
カツカツカツ!
軽快なヒールの音が、ロビーに響く。
受付を横切ったその時、白鳥百合に呼び止められた。
「ちょっと、渚!」
「へ?」
な、渚?
キョトンとして立ち止まると、白鳥百合は「こっちこっち!」なんて手招きしていた。
呼ばれるまま歩み寄れば、いきなり腕を引かれて白鳥百合に肩を組まれた。
「どーすんのよアンタ!」
「え、なに突然」
ジト目になってすぐ傍にあるキレイな顔を睨むと、じれったそうに白鳥百合はさらに身を寄せた。
……かりにもあなた業務中でしょ。
会社の顔、受付嬢が大っぴらに私語してて言い訳?
「久遠さんよ!転勤決まったんでしょ?しかも行先はパリって言うじゃない!で、どうすんの?なんか策でもあるの?」
「もちろん、ある」
コクリと頷けば、白鳥百合は「へ?」と気の抜けた顔をした。
「あ、あるならいいのよ」
「うん。心配してくれてありがとう」
「し、心配? べべ、別にあたしはアンタの心配なんて……目の保養がいなくなるのがつまんないだけよ」
吐き捨てるようにそう言うと、頬を上気させた白鳥百合は何食わぬ顔で所定の位置に戻った。
変な人……。
って、それはもともとか。
おかしくて吹き出したら、それに気付いた百合に睨まれてしまった。
あたし、あなたがいて、ちょっとだけ楽しかったよ。
そう思ったのは、内緒だけどね。