極上な恋をセンパイと。
「ごめん、待った?」
「平気。 あたしが早く来ちゃっただけだから」
「待ったってことか……本当ごめん」
肩をすくめたあたしに、浩介は本当に申し訳なさそうに言った。
流れる前髪をかきあげて、その手でキュッとネクタイを締める。
「今日は奢るよ。待たせたお詫びと……せっかくのクリスマスを俺にくれたお礼に」
「あはは。なにそれ。そんなキザなセリフいうキャラだっけ」
笑いながら並んで歩き出すと、浩介があたしを見下ろした。
「渚」
「なあに?」
その声につられるように顔を上げると、うんと優しく笑う浩介がいて。
?
キョトンと瞬きをすれば、歩調を緩めてそのまま立ち止まってしまった。
「どうしたの?」
「いや。俺さ、もうわかっちゃったんだ」
「え?」
「渚がどんな答え出したのか」
「……」
浩介……?
口を開きかけた、その時だった。
……。
かすかに聞こえる”音”に、喉まで出かかった言葉がすんなり引っ込んでしまった。
それは、どんどん近くなる。
クリスマスイブ。
たくさんの人で賑わう喧騒の中、迷わず、真っ直ぐに近づいてくる。
――――靴音。