極上な恋をセンパイと。
何が起こったの?
センパイ……何言ってるの?
突然の事に、頭が真っ白になる。
「――どういう事?」
さっきまでの優しい笑顔は、どこにもない。
低い声でそう言った浩介に、一気に現実に引き戻された。
センパイは頭を下げたままだ。
前髪で隠れたその横顔は、あたしの場所からは確認できない。
……でも。
「佐伯はうちで……。
いえ、”俺”が必要なんです」
……センパイ……。
あたしを、必要?
……センパイが?
全然理解が追い付かない。
わけがわからなくて、だから……。
鼻の奥が、ツンと痛い。
喉の奥が、熱い。
センパイの言葉が、震える体に染み込んでくる。
あたしはキュッと唇を噛みしめて、センパイの背中を見つめた。
ふーん、と目を細めた浩介。
「……だけど、聞いた話だと久遠くん来年はパリに転勤だろ?
なら渚を縛る権利ないと思うけど。それに、決めるのは渚じゃないかな?」
ゆっくりと顔を上げたセンパイ。
「もちろん、決めるのは佐伯です。でもこいつを手離したくないのも俺の本心です」
「なにその言い分。それじゃ全然納得出来ないよ」
あたしはたまらずに、ふたりの間に割り込んだ。
ドキン
ドキン
あたしは小さく息を吸い込むと、浩介の顔を見上げた。
「浩介、あたし決めたんだ」
「渚の気持ち?……うん、聞かせて」
コクリと頷くと、浩介はニコリと微笑んだ。