極上な恋をセンパイと。
「浩介の話、すごく嬉しかったし、とてもありがたいなって思った」
「うん」
すぐ後ろに、センパイがいる。
センパイにも聞いてもらいたい。
あたしはスウッと息を吸い込むとその勢いでガバッと頭を下げた。
「でもごめんなさい!あたし、今の会社辞められない。やりたい事が出来たの」
「やりたい事?」
「うん。 あたしは今の会社でもっと頑張って、それで認めてもらえるようになったらパリに行きたい」
センパイの傍に行くために。
「もっとたくさんの世界を知りたいの。ちゃんと、自分の目で」
大好きなこの仕事を、もっとキラキラにしてくれるのは……。
振り返ると、真っ直ぐにあたしを見下ろすセンパイとすぐに視線が絡み合う。
真っ直ぐで、迷いのない瞳。
彼が見つめるその先を、あたしも見てみたい。
「あたしにも、センパイが必要なの。だから、あたしは今の会社で頑張る」
「……」
切れ長の瞳が、ふと柔らかくなる。
久しぶりに……センパイの目、真っ直ぐ見れた……。
無性に泣きたくなって、センパイの傍に駆け寄りたくなって……。
「……渚、まだ俺がいるよ」
「!」
呆れたような、怒ったような声に慌てて顔を上げる。
恐る恐る見上げた先の浩介が……、穏やかに微笑んでいたから驚いた。
「ごめん、浩介……あたし、」
言いかけると、浩介の手があたしを制した。
「今日渚の顔見た瞬間から、なんとなく答えはわかってたよ」
「え?」
「妙にふっ切れた顔してたから」
そうだったの?
あたしって、もしかしてわかりやすい?
思わず苦笑いを零すと、浩介が視線を上げた。