極上な恋をセンパイと。
「久遠くん、磯谷さんのところで働くの?」
「はい。3年間色々勉強してきます」
「それは大変だ。で?ミュウも一緒だって聞いたけど」
「美優は磯谷さん専属ですし、それもわかってます。 佐伯に嫌な思いさせるつもりもありません」
「へえ。ま、帰ってきた時は顔見せてよ。苦労話聞きたいし。じゃあね、渚」
浩介はそう言って、ヒラリと手を挙げてそのまま人並みに消えていった。
行っちゃった……。
……なんだか、意外とあっさりしてたな……。
「佐伯」
消えた浩介の背中を追いかけていると、センパイの声にハッと我に返った。
「は、はい!……へ?」
慌てて振り返ると、目の前に何かが差し出されていた。
手?
それは、センパイの手。
え、なに?
なんですか?手に何か……。
わけが分からなくて、センパイの顔と手を交互に見やる。
すると、「アホか」と呆れたような声を共に額を弾かれた。
「あたっ!な、なにするんです……」
痛い。
「手、貸せ」
「え?」
「お前の手を貸せって言ってんだよ」
手……手を?
なぜか苛立った様子の久遠センパイ。
あたしは言われるがまま、ポンッと手を乗せた。