極上な恋をセンパイと。
―――……数日後。
結局行くことにしたあたしは、高度1万メートル上空にいた。
「すごいですね!あたしビジネスクラスって初めてです」
広々とした飛行機のシートに座って、ちょっぴり優雅な気分。
やばい……。
仕事ってこと忘れそう……。
チラリと隣に視線を移すと、長い足を持て余した久遠センパイが真剣な顔をしてファッション誌を眺めていた。
うわ……。
なんか眉間にシワよってるけど。
キレイな顔が、なぜか歪んでる。
長いまつ毛にかかる前髪が、センパイの瞬きに合わせて揺れた。
「なに見てんだよ」
「へッ?」
ずっと雑誌を見つめていた瞳が、いきなりあたしを捕えた。
“なに見てんだ?”
た、たしかに……。
なに見てたんだろう……。
言葉に詰まってるあたしの顔を、難しい顔でしばらく眺めていたセンパイ。
怒ったのかな……。
勝手に見てたから、気分悪くしたのかも。
なんて焦ってると、センパイの口角が少しだけ持ち上がった。
「まさかお前、仕事って事忘れてないだろーな?」
「え……そ、そんなわけないじゃないですか! 忘れてませんッ」
うッ!
やっぱりセンパイにはお見通しってわけですか……。
そんなにわかりやすいのかな。
ダメだ。しっかりしないと!