極上な恋をセンパイと。
会社のオフィスだと思っていたけど、巨大な倉庫みたいな場所に向かうセンパイ。
ショーを明日に控えたそこは、まさに戦場。
磯谷さんという人を探して慌ただしく動き回る人たちの間をセンパイはスイスイ進む。
国籍問わずいろんな人が入り乱れていて、明日使うであろう衣装を運んでいるのが見えた。
すごい……!
わぁ、あんなデザイン見た事ない。
「佐伯!」
思わず足を止めて眺めていると、鋭い声が飛んできた。
ビクリとして振り返る。
見ると、センパイが少し先であたしを睨んでいた。
「何してるはやくしろ!」
「は、はい!」
ひえー!
海外って初めてだし、それにこんな場所に来られるなんて貴重すぎて。
あたし浮かれてる!気をつけなきゃ。
だけど少しだけ。ほんの少しでいいから見学させてほしいな……。
慌ててセンパイに駆け寄った。
だけどセンパイにそんなあたしの気持ちが伝わったのか、スッと目を細めてあたしに視線を落とした。
「いいか?俺から離れるなよ。ここではぐれても俺は探さないからな」
「はい」
溜息まじりにそう言ってセンパイは、また歩き出した。
探さないって……。
迷子になんてならないわよ。
「子供じゃないんだから」
さっさと歩いて行くセンパイの背中を眺めながら、思わずムッとしてしまった。