極上な恋をセンパイと。
ハッとして顔を上げると、驚いたように目を見開くセンパイと目が合う。
頬杖をついたまま2、3度瞬きを繰り返したセンパイ。
あたしはその視線から逃れるようにフォークにお肉を突き刺して、そのまま勢いよく口に放り込んだ。
「ほら、センパイっていつも仕事してるイメージって言うか……。毎日遅くまで残業してるし、休日出勤だってしてるでしょ?だから、その……プライベートとの両立の仕方をぜひ教えて欲しいというか……教えて下さい!」
あたしがペラペラ話す間にも、センパイの眉間には深~いシワが寄って行く。
苦しい言い訳!
う……。
自滅だ。
いきなりそんなプライベートな事、失礼だったよね……。
「す、すみません……」
「……ぶはっ」
シュンとして頭を下げたあたしを見て、センパイがいきなり笑い出した。
「……くくく……あはは!」
「……せ、センパイ?」
ポカンと呆気にとられるあたし。
しばらく笑い転げたセンパイは、目じりに溜まった涙をぬぐいながらまたワインをコクンと飲んだ。
「はぁー笑った。 やっぱり佐伯はおもしれぇな」
「……褒めてないですよね?」
お、面白い?
こんなふうに笑うセンパイ、初めて見たかも。
それだけの事で、めちゃくちゃ動揺してるあたしがいて。
焦った……。
かあああって火照る頬を隠すように、残っている料理を黙々と口に運んだ。
だけどセンパイはそんなあたしなんかお構いなしで、
「いや? 俺なりの褒め言葉」
って言って、意地悪な笑みを零すんだ。
……結局彼女がいるのかとか、オフの日はどうしてるのかとかわからなかったけど。
胸の中がジワリと熱をもつのは、きっとセンパイが仕事の日とは違う顔をあたしに見せるからだと思う。
「そんじゃ、そろそろ部屋に戻るか。明日も早いからな」
「あ、はい」
ジャケットを持って立ち上がったセンパイに慌ててついていく。
弾丸出張だから、明日ショーを見たらパリとはお別れなんだろう。
仕事なんだから仕方ないけど。
そう思いながらチェックインをするセンパイの姿を眺めていた。