極上な恋をセンパイと。


「……」



大きなベッド。
その足元を照らす、小さな照明。

カーテンの隙間から、消えることのないパリの街の明かりが漏れている。




ベッドに寝転んだセンパイは、その明かりを頼りに、資料に目を通していた。


寝て……なかったんだ。



ラフなTシャツから伸びる筋肉質な腕。
それを枕代わりにしているセンパイの横顔。


淡いオレンジの照明のせいだろうか。


なんか……
目が逸らせない。



あたしの視線に気付いたセンパイが、ふいにこちらを見た。


わ……。




「……なんだ、起きてたのか」




サラサラの前髪が、流れるように落ちる。




「……センパイはまだ寝ないんですか? 明日、朝早いんですよね」

「そうだな。でも俺、普段からあんま寝ない主義だから」



資料を持っていた腕をトサッとベッドに落とすと、センパイが目を細めた。




「主義……ですか?」

「ああ。 寝てる時間が惜しい」

「…………」




それって、仕事する方がいいって事?

そう思っていると、センパイはあたしの考えが分かったかのように、眉を下げて笑う。




「寝る前っていろんな事考えるだろ? そーすっと、頭が冴えるっていうか。 だから寝れないって言う方が正しいかもな」

「でも、それじゃあ疲れが取れないんじゃ……」

「ショートスリーパーなんだよ。 逆に寝すぎると疲れる」

「そうゆうもんですか……」



あたし、布団に入ったらすぐ寝ちゃうからなー……。



「佐伯は、3分で寝るタイプだろ」

「へ?」


ハッと視線を戻すと。
口元をクイッと持ち上げて、イジワルに笑うセンパイがいて。



「……あ、あたしだって考え事しますよ!」

「そうしてるうちに寝落ちだろ?」

「っ!」



思わずムキになってガバッと起き上がる。
まるで信じてないセンパイが「っはは!」なんて無邪気に笑うもんだから……。


言い返そうとしていたあたしの言葉たちは、どこかへ引っ込んでしまった。





……なんなんですか、それ。


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