極上な恋をセンパイと。
ショーは大成功で幕を閉じた。
フワフワとした夢のような余韻に浸っているあたしに向かって、センパイは「行くぞ」とだけ言って足早に会場を後にした。
そのまま舞台裏へと向かう。
そこには、昨日会った磯谷さんがいて。
たくさんのデザイナーや関係者と握手を交わしていた。
センパイもその輪に入って、磯谷さんに手を伸ばした。
「お疲れ様です。最高でした」
「おお、久遠くん!ありがとう、今度また君たちと仕事が出来るのを楽しみにしてるよ」
「はい。是非!」
ギュッと固く握手を交わし、磯谷さんはセンパイの肩をトンっとたたいた。
「で?君らの予定は?」
磯谷さんが後ろにいたあたしとセンパイを交互に見ながら言った。
「すみません、夕方の便で戻るのでゆっくりしていられないんです」
「そうか……。ま、今度は俺が日本に行くよ。その時ゆっくり話そう」
磯谷さんって、ほんとに気さくで素敵な人だな。
ニコニコとそう言って、ひらりと手を挙げた磯谷さんを見ながらつくづく思ってしまった。
彼はこう見えて、今日のこのファッションショーのデザイナーを務めていたんだから。
人って見かけによらないものだ。