極上な恋をセンパイと。
気持ちの正体
「センパイ、確認お願いします」
「ん」
パソコンに向かったまま手だけを差し出したセンパイ。
その手に、資料を乗せる。
何枚にも重なるそれを、パラパラとめくるとざっと目を通しただけでパタンと閉じてしまったセンパイは、すぐにパソコンに意識を戻した。
「あ、あのどうでしょうか?」
「ダメだ」
う。
やっぱり……。
「もっと簡潔にまとめろと何度も言ってるだろ。一度見てすぐにわかるようにしろ」
「は、はい」
あたしに目を合わせる事もなく、そう言うとセンパイはキーボードを叩き始めた。
胸の中にきゅっと資料を押し込めて、唇を噛み締めた。
センパイの下で仕事をするようになって、もう半年。
このキツイ態度にも慣れてきたつもりだけど、仕事面ではまだまだ半人前。
沈み込みそうな気持ちをなんとか隠して、もう一度デスクに向かう。
顧客リストがズラリと並んだそれを眺めて、すぐ隣から聞こえるリズミカルなタイピングに、気づかれないように小さくため息を零した。
もう少し……。
もう少しだけでも、認めてくれたらいいのにな……。
そんな時だ。
あたしは、とんでもないミスをしてしまった。