極上な恋をセンパイと。
「明日の朝までに300だ」
センパイは諦めてないんだ。
あたし、すぐに無理だって決めつけて……。
こんなんじゃ、いつまでたっても認めてもらえるはずがない。
「は、はいっ」
あたしはグッと唇を結ぶと、バッグを掴んでセンパイの背中を追った。
タクシーで、下請けの工場へ向かう。
その途中で、部長にも事情を説明し少しの間だけ業者には時間をもらえるように手を打ってもらった。
工場は時間も時間で、この時間に出勤しているのは、夜勤の社員さんたちだった。
彼らにはすでに別の仕事がある。
それを邪魔するわけにはいかない。
センパイとふたり、工場長の山下さんに頭を下げた。
最初は無理だと首を振っていた山下さんだったけど、とうとう根負けし、早朝5時までならとの条件を受けて、工場を使ってもいいとの了承を得た。
作らなくてはならないもの。
それは、ヘアゴムにつける飾りの部分。
大きめのリボンがついたゴムに、星や鍵、猫や靴。他にも色んな形をあしらったチャームを、自分で選んでリボンにつけられるようになっている。
そのチャームの部分が足りないのだ。
「おし。やるぞ」
「はい!」
あたし達はさっそく作業にとりかかった。
時間が惜しい。
ネクタイを無造作に外して、それをズボンのポケットに入れたセンパイの後ろ姿に、あたしは唇を噛みしめた。