極上な恋をセンパイと。


――――………
―――……



「よろしくお願いしますっ」



走り去るトラックに、深々と頭を下げる。
エンジン音が遠くなり、やがて消えた。


あたしはそこでようやく顔を上げた。


間に合った……。
間に合ったんだ。


諦めなくて、よかった。

一睡もせずにいたせいで、服も髪も、メイクだってボロボロ。

だけど、そんなのはどうでもよくて。
ただ、今にも崩れそ落ちそうな足で何とか踏ん張って立っていた。



あたし、何してんだろ……。

こんなんじゃ、取引先からの信頼がなくなってもおかしくない。
今回は、センパイだけじゃなくて、部長や課長、きっといろんな人が動いてくれた。

だから、こうして間に合わせることが出来た。


ほんと、ダメダメ……。




「なーに突っ立ってんだよ。帰るぞ」

「……センパイ……」



手にした缶コーヒーをクイッと飲み干したセンパイは、グルグルと首を回して歩き出す。

でも、あたしが俯いたのに気付いて足を止めた。



「センパイ……あの、本当にすみませんでした。あたしがもっとしっかり確認しておけば、こんな事にはならなかったのに」

「……」



朝日が差し込んで、振り返ったセンパイの背中を照らす。

足元に伸びた、センパイの影がもどかしてくて、ジワリと視界が滲んだ。




……泣いたらダメ。
そんなの卑怯だ。

あたしはグッとそれを堪え、唇を噛みしめた。


と、その時だった。



「おい」


不意に近くに感じたその声と一緒に、いきなりおでこを小突かれた。



え……。



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