極上な恋をセンパイと。
見上げると、朝日を背にしたセンパイがすぐそばであたしを見降ろしていた。
逆光になったセンパイは、呆れたように目を細めた。
「いいか、佐伯。
失敗は誰にでもある。別に失敗したっていいんだ。
だけど、同じことを繰り返すな」
「……はい」
「それに、今回の事は、俺のミスでもあるからな」
え?
「俺の確認ミスだ。悪かった」
そんな……。
そんな事言わないで下さい……。
思ってもいなかったセンパイからの言葉に、さらに涙腺が緩みそうになった時。
センパイがハッとして腕時計に視線を落とした。
「もうこんな時間か。 俺朝一で会議入ってたんだわ。
お前は家帰ってちょっと寝ろ。部長には半休って俺から言っとくから」
「え?そ、そんな……あたしもこのまま出勤します」
いそいそと鞄を取りに行ったセンパイに慌ててついて行く。
でもセンパイはジロリとあたしを睨んで言った。
「アホ。俺が嫌なんだよ。 いいか、ちゃんと風呂入って来いよ!」
「え、センパ……」
最後まで声をかけさせてもらえなかった。
走り去るタクシーのテールランプを茫然と追いかけて、あたしはハッとした。
ふ、風呂入れって事は……。
あたし、く、くさいのっ!!?
「…………」
本当はわかってる。
あれは、センパイなりの優しさなんだって……。
あたしはすでにいなくなったセンパイに向かって、小さく頭を下げた。