極上な恋をセンパイと。
それから数日が過ぎた、ある日。
その日もあたしは、センパイから渡された山のようなファイルとパソコンに向き合っていた。
このオフィスには、普段あまり人がいない。
皆営業とか、顧客回りをしていて、少し帰ってきては、また出かけて行くのがほとんどだった。
カタカタとキーボードをたたいてると、不意に手元に缶コーヒーが置かれハッとして顔を上げた。
そこには……
「あ、時東課長……」
「ちょっと休憩しない?」
え?
ニコリと微笑まれ時計に目を走らせた。
時間はすでに定時を過ぎていて、オフィス内はいつの間にかオレンジ色に染まりつつあった。
「ありがとうございます」
もうこんな時間だったんだ。
久遠センパイが戻ってないから、時間の事忘れてた……。
時東課長から缶コーヒーを受け取ると、あたしは椅子から立ち上がった。
休憩室に向かうと、いつもなら誰かしらいるそこは、時間帯のせいかあたしと課長の貸切だった。
ソファに座り、まだ温かい缶のプルトップを持ち上げた。
瞬間立ち上る、コーヒーの香りにホッとため息が零れた。
……はあ、美味しい。
自分でも気づかないうちに、疲れていたようだった。
口に広がるほろ苦い甘さが、固まっていた体に染み込んでいく。
「久遠君とうまくやれてるみたいだね」
「え?」
唐突に言われて、落としていた視線を上げた。
見ると、あたしとは反対側に腰を落とした課長がコクリと缶コーヒーに口を運んだ。