極上な恋をセンパイと。

パリに出張に行った時。
見せてくれたあの笑顔は、あれ以来拝めていない。

センパイをあんな風にするほどの、魅力的なものがココにはないんだろうか。



「……」


カタカタ

 カタカタ、タン


カタカタカタカタ……


―――………


「佐伯?」




センパイ……



「佐伯、どうした?」



センパイは……



「……」




いつの間にか止んだタイピングの音にも気付かづに、『凄い』と楽しそうに笑っていたセンパイのあの時の笑顔が頭の中で、何度も浮かぶ。


浮かんでは消え、浮かんでは、消える。

あたしに向けた笑顔じゃない。

でも、思い返すセンパイは、間違いなくあたしに笑ってくれていた。


……センパイは、どんな人なの?



その時、


「あたっ」


いきなり、おでこに痛みが走った。


えっ!!!?


ハッとして何度も瞬きを繰り返す。

気が付くと、目の前には呆れたようにため息をついたセンパイがいて。



「……お前さ、なんなの?」

「な、なんなのって、センパイこそ、な、なにするんですかいきなり!」


はたかれたおでこがジンジン痛い。
そこをさするようにして涙目で訴えると、頬杖をついたセンパイが意地悪く口角を吊り上げた。


「んな目で見つめんな。
手ぇ出しそうになるだろうが」



…………え?



「…………えええっ」







< 59 / 243 >

この作品をシェア

pagetop