極上な恋をセンパイと。
と、その時だった。
「佐伯?」
「っ……!」
不意に名前を呼ばれ、ハッとして顔を上げた。
そこには……
「久遠センパイ?」
「何してんだ?昼飯も食わずに仕事か?」
「……」
うそ……センパイだ……。
センパイに会えた……。
同じ部署で働いてるのに、それがすごくキセキみたいに感じて、ガタッと身を乗り出した。
「センパイは?今からお昼ですか?」
「いや、俺は資料を取りに来ただけだよ」
「そ、うなんですね……」
センパイは、センパイだ……。
「また、お昼抜きなんですか?」
「別に一回昼飯食わなくても平気だよ。あ、でもお前はダメだぞ。ちゃんと食え。じゃないと腹ペコの女はこえーからな」
「あ、あたしそんなに食いしん坊じゃないです」
「っはは」
そんな会話をしながらも、センパイの手は止まらない。
カチカチっとマウスを動かして、慣れた様子でお目当ての資料を探し当てた。
すぐにコピー機が反応する。
……よかったね、久遠センパイのパソコン……。
やっと触ってもらえた……。
なんて、ぼんやり考えていると、ヒョイっとセンパイが覗き込んできた。
え……?
ドキッとして、瞬きを繰り返しているとそのままセンパイの手がポンと頭に乗っかった。
!!!
「……」
「疲れてんなら、ちゃんと休むよーに」
ポンポン
……。
数回、あたしの頭の上を跳ねたその手はすぐに離れ、そのままコピー機から数枚の用紙を掴んだ。
ハラリと落ちた、前髪でセンパイのその瞳は見えないけど。
きっと、いつもみたいに、仕事モードの顔してるんでしょ?
でも……ずるい。
「センパイも、ちゃんと休んでくださいね」
「わかってる。だから、わざわざここに来たんだ」
「……え?」
そう言ったセンパイは、視線だけをあたしに向けて小さく笑った。
「じゃあなー」
ヒラヒラと資料ごと手をふると、茫然としたままのあたしを置いて、センパイはさっさと出て行ってしまった。
「…………」
え、なにっ!!!?