極上な恋をセンパイと。
――それから数日たった週末。
あたし達は、会社帰りに都内のバーに立ち寄っていた。
大通りから一歩入った通りにあるこのお店は、静かなジャズが心地いい落ち着いた雰囲気。
クラシック調の家具で統一されていて、バーカウンターに並ぶいくつものグラスやボトルが、まるでスポットライトを当てたように、ぽっかりと浮かびあがっていた。
いつもなら気兼ねない立飲み屋や、居酒屋が多いんだけど。
今日は柘植さんの行きつけのお店に連れてきてもらったんだ。
そしてあたしの隣には、時東課長、真山くんといつもの顔ぶれ。
「いや~、一回ここに来てみたかったんすよね。ちょっと俺には敷居が高いと言うか……。
でも、さすが、柘植センパイっ」
真山くんは興奮気味に言うと、細いグラスに入ったビールをコクリと飲んだ。
年下らしい可愛い顔をして、この人懐っこい性格。
他部署や、営業回りで行く他の会社のお姉さま方にも人気って噂は、嫌でもあたしの耳に入っていた。
よく考えたらうちのチームって、みんな顔だけはいいんだよね……。
チラリと視線をあげる。
細いグラスに注がれたビールを仰ぐ可愛い真山くん。
いかにも女子がほっとかない感じの、ちょっと軽そうな柘植さん。
マジメで、でも誰に対しても優しい時東課長。
それから……。
「―――ところで、イズミは今日も不参加なの?」
ショットグラスを傾けていた柘植さんが、あたしに視線を落とした。
「え?あ、えっと……一応真山くんが声をかけたらしいですけど、案の定……」
「なるほど」
柘植さんはうんうんと頷いて、「アイツの仕事バカはどうしよもないね」と苦笑いを零した。
「区切り付いたら顔だしてくれるって言ってましたよ」
「それは期待できないね」
身を乗り出した真山くんに、柘植さんが肩をすくめた。