極上な恋をセンパイと。


「渚さんって、肌白いっすよね」

「は?」



潤んだ瞳でそう言われ、思わず身を引く。
目をパチクリさせていると、その彼の表情がふにゃりと崩れた。



「前から思ってたんですよ。綺麗だなーって。
とゆーか、可愛いですね!
ほら、アレですよアレ!動物に例えるなら……レッサーパンダ!」

「れ、れっさー?」

「レッサー、パ・ン・ダ。ほら、いたでしょ、二本足で立つ、あの可愛いヤツっ」


頬杖をついたまま、ニコニコと無邪気な笑顔を向けられて、そのうえ例えられたのが人間ですらない。
全然悪びれるそぶりもなく、真山くんはさらに続ける。


「あ、でも久遠センパイを健気に待つところなんて、それこそ忠犬ハチ公かも」

「ハチ公? てゆか、なんでそこでセンパイが出てくるのよっ」

「だってぇ、いつも待ってるじゃなですか、センパイが戻ってくるの~」

「なっ、待ってない!待ってるわけないじゃないっ!別にセンパイがいなくたって、あたし平気なんだからっ!むしろ、いないほうが気が楽ってもんよ!」


勢いに任せてグラスを掴み、残っていたお酒を一気に仰いだ。

真山くん何言ってくれてんの!?

テーブルに空になったグラスをトン!と置いた、その時だった。





「――そりゃ悪かったな。気を重くさせて」



突然、背中に突き刺さった、地を這うような低い声。


いきなり体は自由を奪われて、思考回路もろとも停止した。

頭の昇っていた血が、一気に引く感覚。

固まっていると、あいていた左隣の席に、見覚えのあるオシャレな腕時計が……。



「……! く、久遠センパイっ、おお、お疲れ様です」

「……おお」


頬杖をついてたセンパイの、切れ長の瞳がギロリと動いた。



ひえええええ!!!!

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