極上な恋をセンパイと。
「……」
「……」
な、なんでセンパイ黙ってるんですか?
時東課長が真山くんを連れて帰ってから数分。
いきなりふたりきりになってしまったあたし達は、無言でグラスを傾けてた。
ま、まあセンパイはいつも通りと言えばいつも通りだよね。
そんなに自分から話したりするわけでもないし。
仕事の事とか、好きな事になれば別だろうけど……。
ふと、パリでの楽しそうに話すセンパイの笑顔を思い出した。
両手で握りしめたグラスの中で、氷がカランと傾いた。
「…………」
うう。
きっと会社なら普通に話しかけれたはずなのに。
ここが、いい雰囲気のバーで、カウンターに隣同士で。
センパイの横顔が、天井にかけられている色とりどりのグラスで、七色に色を変えて、すごく綺麗だから……。
あたしは、平常心でいられない。
とにかく何か話さなくちゃ……。
えっと、えっーと。
なるべく自然に……。
ダメだ、考えれば考えるほど、頭ん中パニック!
と、その時。
「――っぷ!」
今まで全くその表情を変えなかったセンパイが、いきなり吹き出した。
「っくく」
「え、せ、センパイ?」
小さく肩を揺らし、可笑しそうに笑ってるセンパイを見て、キョトンとしてしまう。
そんなあたしを覗き込むように眺めると。
「見た目は、そうだな。確かにレッサーパンダかもな」
「……」
―――――は?