極上な恋をセンパイと。
「え、なんですか?」
いきなり。
眉間にグッとシワを寄せる。
センパイは意地悪に口角をクイッと持ち上げると、その目を細めた。
……ドキン
意志の強そうな瞳が、あたしを射抜く。
頬が火照るのを感じて、ドギマギしてしまう。
グラスを唇に押し当てながら、センパイがからかうように言った。
「……んで、このハチ公は俺を健気に待ってんだな」
「え?」
って、それってさっきの真山くんの話!?
「聞いてたんですかっ?」
「聞こえたんだよ、勝手に」
「あ、ああ、あたし、別にそんなつもりありませんから!
か、勘違いしないで下さいね!!?」
センパイの視線から逃れるように、プイッと顔を逸らした。
「なにをどう勘違いすんだよ」
「そ、それは、その……」
その聞き方は、ずるいと思う!
口ごもっていると、「くく」って笑われた。
うう……。
話、変えなきゃ。
「……えっと、あの、最近お仕事どうですか?」
「仕事?」
「はい。あ、センパイ最近すごく忙しそうですけど……今お手伝いされてる事が片付いたら、戻ってこられるんですよね?」
「たぶんな。週明けの月曜に会議があるんだけど、それまでは戻れねぇかも」
「会議、ですか?」
「ん。そこで意見聞かせてくれって」
「なるほど」
センパイは、社内でも弁が立つと評判だ。
上層部からの信頼も厚い。
「大変ですね……」
「ま、仕事だからな」
そう言って、小さく笑ったセンパイ。
真っ黒な前髪の奥で、切れ長の瞳がフッと細められた。
「……」
あ。
……今、胸がきゅんってなった。