極上な恋をセンパイと。
「俺、ブラック派なんだけど」
「知ってますよ。でも、甘いものは疲れた時にいいんです」
「……」
そう言ってにっこり笑ってみせると、センパイは何か言いたげに口を開きかけ、でもすぐにあきらめたらしい。
「……しばらく一緒にいなかっただけで、なんか逞しくなったな」
プルトップを持ち上げながらそう言って、苦笑したセンパイ。
「散々センパイに鍛えられましたから!」
「あっそ。……う、あま」
ゴクリとコーヒーを傾けて、あからさまに嫌な顔をしたセンパイが可笑しくて、でもなんだか嬉しくて笑った。
よかった……。
ちゃんと食べてくれて。
売店で買ってきたおにぎりやサンドイッチを軽くたいらげて、オフィス内には久しぶりにセンパイのリズミカルなタイピングが響いていた。
結局手伝うって言っても、何もすることはなくて。
だからあたしは、センパイが作った資料をコピーしてまとめる作業をしていた。
「……」
お互いに話す事はないけど、それも心地いい。
不思議だな……。前まではセンパイの事怖くて仕方なかったのに。
今ではそれが、不器用な優しさだって知った。
久遠センパイは、すごくまっすぐな人。
裏表なんかない、そんな彼にますます惹かれている自分がいて。
窓ガラス越しに反射して見えるセンパイの姿を、ぼんやりと眺めてしまった。
……センパイは、どんな人がタイプなのかな。
彼女、とかいるのかな。
結構社内の女子社員からモテるんだけど、浮ついた話は聞いた事ない。
聞いてみたいな。
また、はぐらかされちゃうかな……。
センパイに、愛されたら……どんな感じなんだろう。
彼女になったら、どんな顔を見せてくれるんだろう……
と、その時だった。
『ピ――――――――』
機械的な音が、室内に響いてそこでようやく現実に引き戻された。