極上な恋をセンパイと。




照明を落とした薄暗い店内は、落ち着いていて、ちょっぴり大人の雰囲気。
各テーブルごとに柔らかな布で仕切られていて、それぞれをロココ調のランプが照らしていた。

BGMは耳に馴染むジャズ。


あたしは、ワイングラスが煌めくカウンターに座って、ジッと手元を凝視していた。



「ハリケーン、お待たせしました」


と、そこへ小さなワイングラスに注がれたカクテルが滑るように置かれた。


「ハリケーンってお前、そんな強いの……。あんま飲むなよ」

「……」


隣に座ったセンパイが、半ば呆れたように言った。
でも、あたしはそれには答えず、グラスを掴むと、グイッと口に運ぶ。

瞬間、ミントとレモンの爽やかな香りが鼻に抜けた。

あー、美味しい!


飲むなって言われても……飲まずにいられないっての!


「わぁ、すっごい飲みっぷりですね~」


さらにもう一口流し込んだその時、跳ねるような猫なで声がしてジロリと顔を上げた。

それは、センパイの向こう側。
あたしとは反対方向から、ヒョイっと覗き込んできた白鳥百合だ。


「佐伯さんってもしかして、ザルなんですかぁ?」

「……はい?」



ざ、ザル?

酒豪とかじゃなく、ザルって言っちゃうわけ?


チラリと白鳥百合の手元を見ると、ピンク色の可愛らしいカクテルが、まだ並々注がれていた。



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