極上な恋をセンパイと。
「え、ちょ、ちょっと、久遠さんっ!」
白鳥百合が、愕然とした顔で口を開く。
でも、久遠センパイはそんなのまったく気にしないで真山くんに数枚のお札を持たせさっさと出口に向かって歩き出した。
もちろん、あたしの手を引いたまま……。
「お、お疲れ様です!」
「なんなのよぉー!」
背中に真山くんの声と、怒ったような白鳥百合の声がしたけど。
でも、あたしはわけがわからずに、ただセンパイの後を必死でついて歩いた。
外に出ると、すっかり秋の気配が濃くなった空気が、アルコールの入った肺を満たす。
都内の繁華街は、眠る事を知らず、たくさんの人で溢れかえっていた。
その中を、無言で歩いた。
どれくらい歩いただろう、あたしの乗る駅が見えてきたとき、やっとセンパイが手を離した。
その事に、切なくなりながらそっとセンパイに声をかけた。
「……あの、一体なんだったんですか?」
「なんだったって?」
「だから、あの……真山くん置いてきちゃったじゃないですか」
しばらく歩いたおかげで、すっかり酔いもさめた。
ゆっくり歩くセンパイの隣に並んだあたしに、センパイは一瞬視線を落とした。
「せっかくセンパイと合流できたのに、可哀そうだと思います」
真山くんはきっと、センパイと飲めることを楽しみにしてたんじゃないかな。
人の波に乗って歩きながらそう言うと、センパイは「くく」っと小さく肩を揺らした。
「? なんですか?」
センパイが笑った……。
思わず足を止めたあたしに気付いて、センパイもゆっくり足を止めて振り返った。