おいてきぼりのピエロ
『やめときな、お嬢ちゃん』
槙さんは、セブンスターに火をつけながら、言った。
『なんで』
『夜の世界はガキんちょには厳しいんだよ』
深く、深く、煙を吸い込み、吐き出すその姿は、今まで見たどんな大人より、大人に見えた。
私は、大人を馬鹿にしていた。
大人が吐く、どの言葉も陳腐で、その程度のことしか考えてないんだ。
と、さらに私を嘲笑わせた。
『…ガキだよ』
『解ればよろしい』
『だから、大人になりたいの』
歳だけくって、大人ぶってるやつなんかじゃなくて。
『年齢だけの、大人になんかなりたくない』