おいてきぼりのピエロ

―…それが、私が夜の女として働き始めたきっかけだった。





ジュ、と葉を燃やす音を聞き、ライターを放り投げる。
ラッキーストライクの豊かな香りが口内に広がる。

「…煙草を吸い始めたのも、夜がきっかけだったな」
私は、夜の世界で働いて、いろいろなものを知った。

女というもの、男というもの、金というもの、闇というもの。
他にも、たくさん。


知ってよかったものも多かったけど、知らなければよかったものが、多すぎた。
私は福岡、その中でもわりと都会に近いところで暮らしている。

どうせ働くなら中州で。
そんな理由で、働く場所を決めた。


私の家は、貧乏ではないけど、片親だったので学費は自分で払おうと決めていた。
普通のバイトでは、ちょっとキツイとこもあったので、一石二鳥だった。






それを決めてからは、とんとん拍子にコトは進んでいった。
なんだかんだ槙さんが協力してくれたので、働くお店も簡単に決まった。

“クラブ ジュエリー”
ネットで調べたら、ちょっと有名な高級店だった。

槙さんいわく、私は金持ちにうける顔立ちらしい。
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