海響音
「パパ。海さんキレイだね」
椅子の上から窓の外の海を眺め喜ぶ幼い少女。その横に一人の青年が腰を下ろし、同じように海を眺めている。
「美空のママが大好きな海だよ」
彼女が愛した海をこんなに穏やかな気持ちで眺めるのは何年振りだろう。ここ数年は美空の世話やお店のことで、頭が一杯だったと自分でも分かっている。だからこそ、今の穏やかさを受け入れることができるのだろうか。
「そらのママが好きな海さん。じゃぁ、そらも大好きなの」
「そっか。美空も気に入ったか」
「うん」
「じゃぁ、後で砂浜を一緒に歩こうな」
俺の小指を目の前に翳すと満面の笑顔を浮かべ、小さな小指がそれに絡まり指切りをする。「ぜったいね」そう呟いて小さな指が離れ、再び海へ視線を戻す。
「稚空」俺の名前が呼ばれ、振り返ると一人の女性が立っていた。
「私が、美空ちゃん見てるから仕込み始めて。じゃないと、時間に間に合わなくなっちゃう」
声を掛けてくれたのは、幼い頃からの腐れ縁仲間の一人、巴 七姫(トモエ ナナキ)だった。俺は、巴に美空を託し厨房へと足をむけた。
「ナナちゃん。ママのお話して」
美空の要望に応えるべく、七姫が話を始める。
「美空ちゃんのママのお話ね…そう、あれは確か高校の2年生になったばかりの頃だったかな。美空ちゃんの祖母さまと美空ちゃんのパパが学校内で追いかけっこしたことがあるの…」
椅子の上から窓の外の海を眺め喜ぶ幼い少女。その横に一人の青年が腰を下ろし、同じように海を眺めている。
「美空のママが大好きな海だよ」
彼女が愛した海をこんなに穏やかな気持ちで眺めるのは何年振りだろう。ここ数年は美空の世話やお店のことで、頭が一杯だったと自分でも分かっている。だからこそ、今の穏やかさを受け入れることができるのだろうか。
「そらのママが好きな海さん。じゃぁ、そらも大好きなの」
「そっか。美空も気に入ったか」
「うん」
「じゃぁ、後で砂浜を一緒に歩こうな」
俺の小指を目の前に翳すと満面の笑顔を浮かべ、小さな小指がそれに絡まり指切りをする。「ぜったいね」そう呟いて小さな指が離れ、再び海へ視線を戻す。
「稚空」俺の名前が呼ばれ、振り返ると一人の女性が立っていた。
「私が、美空ちゃん見てるから仕込み始めて。じゃないと、時間に間に合わなくなっちゃう」
声を掛けてくれたのは、幼い頃からの腐れ縁仲間の一人、巴 七姫(トモエ ナナキ)だった。俺は、巴に美空を託し厨房へと足をむけた。
「ナナちゃん。ママのお話して」
美空の要望に応えるべく、七姫が話を始める。
「美空ちゃんのママのお話ね…そう、あれは確か高校の2年生になったばかりの頃だったかな。美空ちゃんの祖母さまと美空ちゃんのパパが学校内で追いかけっこしたことがあるの…」