ぶたねこ“ハッピー”の冒険
オレは周りを見回したが、近くにYUIしかいないし、さっきの声は男だった。
朝から変なこと続きで、頭ん中までシャバダバなんだなきっと…。

『シュビドゥバーだよ』

「誰だ、さっきから!」

いきなり大きな声で言ったもんだから、店中の客が注目した。

「くろ猫仮面〜!」

料理を運んできた店員が、役者のような口調で言うので、劇団仲間のおふざけと思われたのか、こっちを見ていた客が『なんだ、うるさいな』という感じでそっぽ向いた。

YUIだけは、普通じゃないことが起こったと感じたのか、「ねぇ、大丈夫?」と聞いてきた。

「えっ、ああ、疲れてるのかな…、卒論のテーマを考えて、昼夜逆転生活だったりしたからな。」

「何か見えた?」

でた、YUIのオカルト好きが始まった。

「いや、何も見えない。ただ…。」

「声がしたんでしょ!」

先におまえが言うなよ。

「ああ、頭ん中に直接な」
「それ、この前本で読んだよ。」

「いや、多分疲れだよ。もう聞こえないし。」

「それより料理、食べよ食べよ!」

イカやエビがプリプリだとか、ちょっと摘んだYUIの“ほうれん草サラダ”のアクが残ってて、口の中がぬぁ〜ってなったとか、どうでもいいように、ただ平らげて店を出た。

「なあYUI、明日何時に病院行くの?」

「午前中に行きたい。」

「OK、オレどこに行けばいい?」午前中ならミーティングともバッティングしないし大丈夫だ。

「9時半に渋谷のモアイ像前に来てもらえない?」

「OK、じゃ明日。」
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