ぶたねこ“ハッピー”の冒険
「おまえ、何をこそこそ探ってる。」

かっ、からだが動かない。
「ふっふっふ、逃げようとしても無駄だよ。」

奥の部屋の前に気配はするのだが、顔を動かすことさえ出来ない。

そのまま全身の力が抜けて気を失ってしまった。

「もしもし、大丈夫?」
「気がついたようだね、どうしました?」

オレは床に倒れていたらしい。警備員と掃除婦が心配そうに見ている。

「どうやって入ったの?
こんなに朝早く。」

「えっ?」

壁掛けの時計を見ると、6時15分。朝早くって?
携帯を見ようとしたが、電源が落ちてる。
朝フル充電されてたのに、どうなってるんだ。

「今、警察も来るから事情を説明して。」

「えっ、警察?
確かに公演してない劇場に入ったけど、ドア開いてたし何で警察沙汰?」

「ドアは閉まってたよ。あたしが夕べ鍵をかけて、今朝開けたんだからね。」

「あんた、どこに隠れてたの?」

夕べ?今朝?

「すみません、今何時ですか?」

「だから朝の6時20分だよ、時計見たろ。」

朝の…、うあ、ミーティングすっぽかしちゃった。
大変だ、矢野は怒り狂ってるぞ。

遠くからサイレンが近付いてくるのがわかる。

バタム、バタムとドアが閉まる音がして、階段を二人の警官が降りてきた。

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